認知症介護現場に好循環を生み出すきっかけに
調査は慶應義塾大学医学部、精神・神経科学教室の専任講師、佐渡充洋氏の協力による医学視点からの検証と、同大学院政策・メディア研究科の特任講師、伊藤健氏による社会学観点からの検証を行った。
佐渡氏は調査で学習療法を実施したグループとしなかったグループを比較した結果、学習をしなかったグループは1年後に要介護度を認定する基準時間が増加した=症状が悪化したのに対し、実施グループは基準時間がほとんど変わらなかったと説明した。
伊藤氏は学習療法が学習者の脳機能に改善をもたらすだけでなく、ケアに関わるスタッフ、学習者の家族、介護施設といった周辺環境にも良い影響を与えることが分かったと伝えた。
学習療法を通じて介護スタッフが1日30分程度学習者と直接コミュニケーションを取ることでより学習者のことを理解し、丁寧なケアを行うことができる。またスタッフからは、学習療法の実施がスタッフ同士の間で効果的な施設運営のためのコミュニケーションツールとして機能しているという声もあがった。
学習療法と対人ケアによって学習者の認知症状の予防、現状維持を実現し、それが結果として要介護度によって変わる介護保険費用の増加を抑えることや、ケアの質向上につながる。公文は学習療法に介護現場の好循環を生み出す可能性を示した。