遺伝子組換え、生物製剤、精密農業で収量増
そのためにウェンテ氏が取り組んでいるのが、積極的な先端技術の導入だ。今回の米国農業視察ツアーでは、最先端の農業技術を提供しているというモンサント・カンパニー(以下モンサント社)の研究施設や本社を訪問し、説明を聞いたが、ウェンテ氏もまた、そのモンサント社の先端技術をいくつか導入し、実際に成果をあげているという。
まず15年ほど前に取り入れたのが、モンサント社のバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術)による害虫抵抗性トウモロコシ。トウモロコシの根を食い荒らす害虫を防除するもので、これだけで平均収穫量は単位面積当たり0.5~0.6トン増加した。
遺伝子組換え作物には、さまざまな意見もある。ウェンテ氏はどう考えているのか、率直にたずねてみた。
「多くの議論があることは把握していますが、私が知る限り、何らかの危険性を指摘する論文は存在しませんし、私自身は、収益を上げるために必要な技術だと考えています。収益が上がらなければ、そもそも農業を続けていくことができませんから」(ウェンテ氏)
さらに、現在テストしているのが「農業用生物製剤」だ。生物製剤とは、自然界に存在する有機素材を利用した薬剤のことで、医療分野で利用されている感染症の予防接種用ワクチンや、血液から生成される血液製剤なども生物製剤にあたる。
農業用生物製剤は、土壌中の微生物や植物抽出物、農業上の益虫などを素材とし、雑草や害虫の管理、ウイルス除去から、作物の健康維持や成長を促進までさせる。
ウェンテ氏が試用しているのはモンサント社「QuickRoots(クイックルーツ)」というブランドで、種をコーティングすると、通常よりも根の成長が促進され、土壌中の養分を効率的に吸収できるとされており、実際に収穫量が増加したら、導入するつもりだという。