プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン(P&G、神戸市)は2016年8月30日から、国内タクシー最大手の日本交通(東京都千代田区)と共同で、「クサくないタクシー」を利用者がスマホアプリで選んで乗れる、「ファブタク」サービスを全国1万3500台で開始した。9月29日まで。
日本交通はサービス向上のため、8年前から乗務員のモニタリングチェックを実施している。あいさつ励行やシートベルト着用のお願いは改善した一方で、車内のニオイは悩みのタネだった。「ファブタク」は送風口に車専用消臭芳香剤「ファブリーズ クルマ イージークリップ」を装着。さらにニオイ対策をとるよう乗務員に指導することで、快適な車内空間を実現した。
サービス開始日、日本交通の赤羽営業所にて「ファブタク出発式」が行われた。セレモニーに参加したのは同交通の川鍋一朗会長、P&Gの伊東正明ヴァイスプレジデント、臭気判定士の富樫真生さんの3人。彼らは車のニオイチェックを行い、基準をクリアしたと判断したタクシーの窓に「ファブタクステッカー」を貼っていく。認定を受けた「ファブタク」に乗務員が乗り込み、手を振りながら営業所を出発した。
「ファブタクのニオイ対策7箇条」はマイカーにも応用できそう
出車の直前、乗務員たちを前に「車内のニオイ対策講座」が催された。講師の富樫さんによれば、タクシーの車内のニオイはさまざまな形で持ち込まれ、空気の動きに伴って拡散していく。換気だけでとるのは難しく、ニオイを根本から消臭する必要があるとのこと。乗務員に示された「ファブタクのニオイ対策7箇条」は、一般のドライバーにも役に立ちそう。
- クルマ用ファブリーズでニオイを根本から消臭
- 乗務員は清潔な制服、洗いたてのYシャツを着用
- 出車前の衣服のニオイチェック
- フロアマット・ゴミのない車内・濡れた雑巾を持ち込まない
- できるだけ車内での食事をしない
- 喫煙休憩後、最低3分の間をあけ、制服をはたいたり、うがいや深呼吸するなど車内にタバコのニオイを持ち込まない
- こまめな車内換気
「ファブタク」は流しでも乗車できるが、無料スマホアプリ「全国タクシー」を使うことで指定配車できる。タクシー業界は過当競争が叫ばれて久しい。同交通は「タクシーを拾う時代からアプリで選ぶ時代」をキャッチフレーズに、ライバル会社との差別化を図る方針だ。
出発式でスピーチした伊東正明ヴァイスプレジデントは、アメリカ本社勤務時代に「ファブリーズ クルマ イージークリップ」を商品化した人物だ。デザインも自ら行い、「かわいい子どもの一つ」と愛情たっぷりに語った。
同商品は日本で車専用消臭芳香剤No.1のシェアを誇る。もっとも車専用消臭芳香剤を使う日本のドライバーは十数%にとどまる。市場に伸びしろがあると同社が考えていたところ、今回の話があった。「ファブリーズのある車内って快適だね」と認知してもらえるきっかけになる――と考えたP&Gは、同交通との提携を決めた。
「ファブリーズ クルマ イージークリップ」は、スカイブリーズ、クリスタルアクア、クリスタルシトラス、富良野ラベンダー、ダウニーエイプリルフレッシュなど10種がある。このうちファブタクに搭載されているのはスカイブリーズのみ。1種に絞った理由について伊東正明ヴァイスプレジデントは、「一番売れている商品ですので、(体験後に)買ってもらえる確率の高いものにした」と説明する。
ファブタクは31日間実施される予定。常備の可能性について記者から質問が飛ぶと、「我々としては365日、出来る限り多くのタクシーにご利用いただくのを最終目標としている」と、さらなる普及に意欲を示した。