クオータ制導入やひとり一票の見直し...民主主義のアップデートを考える必要
少子化の流れを変えるためには、政策だけではなく、政治、つまり、民主主義の在り様についても、考え直す必要があるというのが本書の主張だ。
二人の著者が一致するのは、日本は世界的に見て、女性の地位が低く、遅れているとして、政治の場に女性のクオータ制(割り当て制)を導入すべきという点だ。
「『女性は意識が低い』というおじさんがいたりしますが、民主主義本来の理念は意識が高いか低いかは関係ないんです。そもそもそれ以前に『意識の高い低い』は個人的な問題であって、性差ではくくれない話です」(出口氏)
「女性活躍の審議会に、男性しかいなかったらどうでしょうか。女性の視点は何も反映されません。子育ての審議会が、子育てしたことのないおじさんばかりでは、子どもやお母さんの視点がどこにも反映されません」(駒崎氏)
さらに、当事者自身が直接的に政治や政策に関わる「草の根ロビイング」を積極的に展開すべきだとする。インターネットを利用すれば誰でも楽に声を上げることができる時代であり、現場の事情を熟知し、困っている当事者自身が、政治家や官僚とコンタクトすることが有効だし、大切だという。
実際、駒崎氏は、今年の通常国会で改正された二つの法律(①児童扶養手当法:ひとり親世帯に給付される第二子以降の児童扶養手当が36年ぶりに増額された、②障害者総合支援法:これまで制度の谷間に落ち、十分な支援が受けられなかった医療的ケア児への支援体制の強化が法定化された)を例に、その意義を強調している。
加えて、駒崎氏は、人口ピラミッドが逆三角形(現役世代に比べ高齢者の数が多くなる形)となり、しかも、若者の投票率が低位のままだとすると、「シルバー民主主義」全盛の時代となってしまうことを懸念する。このままでは、目先の高齢者の利益が優先され、将来世代にとって重要な中長期的な投資が軽視されてしまうというのだ。
こうした事態を回避するために、民主主義をアップデートすべきだとして、ドメイン投票制(親権者に子どもの数だけ投票権を与える)や世代別の選挙区制(青年国会、中年国会、高齢国会)といった未だ世界に例をみない選挙制度の提案を行っている。こうした提案は、最近、世代間格差に懸念を示す若手の経済学者等を中心に展開されているが、そこには停滞する日本社会への焦りや怒りに似た思いが感じられる。
出口氏は、こうした問題意識に理解を示しつつも、年齢フリーの原則を基本に、年齢によって差を設けるのではなく、むしろ、若者の投票率を引き上げるための工夫、例えば、エストニアで導入されているようなインターネット投票を実現するといった提案を行っている。
ドメイン投票制や世代別の選挙区制といった民主主義の在り様を大きく変えるような改革案が広く受け入れられるかどうかはわからないが、こうした世代の違いを正面から問う提案が現役世代から出されるようになった現実を前にすると、少子化という人口構造の変化がもたらすインパクトの大きさを改めて感じさせられる。
本気で、未来に向けて、どう取り組むかが問われているのだ。