古代から人は健康長寿を追い求めてきた。21世紀に入り「老化に起因するあらゆる疾患に効く可能性がある」と世界中の医療研究者から注目されている物質がある。私たちの体内に存在するアミノ酸の一種である「ALA」(アラ)だ。
ALAは5-アミノレブリン酸ともいい、細胞内のミトコンドリアに多く存在する。ミトコンドリアは栄養素をエネルギーと水(代謝水)に変える「エネルギー生産工場」で、ALAはミトコンドリアの機能に欠かせない成分。いわば細胞にとっての潤滑油といえる。
体内のALAの量は17歳がピークで加齢とともに少なくなる。不足すると何が起こるのか――。まずミトコンドリアがうまく機能しなくなる。すると活性酸素が増えて老化の原因になる。また作られるエネルギー量が減るため、余った脂肪と糖質が脂肪細胞として蓄積されてしまう。それが進むと肥満になり、さまざまな成人病を引き起こす。さらに代謝水の生成量が減るので、細胞から潤いが失われる。
ALAの研究が進展した理由は「日本発の大量生産技術」
きちんとALAを取り入れることでエネルギー代謝が促進されると、疲れにくい体になる効果が期待される。糖や脂肪がエネルギーに変換されれば血糖値の上昇が抑えられ、メタボ解消につながる可能性がある。体内で作り出される水(代謝水)も増えることから、肌水分量の改善にもつながると考えられる。
ALAの1日当たりの摂取量は15mgが理想とされる。しかし一般の食品から十分な量を摂取するのは難しく、仮にトマトで補うとしたら150kg以上食べる必要がある。となればサプリメントのような形で補給するのが現実的だ。
実は60年ほど前からALAの果たす役割は医学界で認識されていた。しかし大量生産ができなかったため研究は遅れていた。1980年代にコスモ石油が発酵技術で量産を確立して以来、日本はALAの研究開発で世界をリードしている。東京大学をはじめ国内外の研究機関や医薬品メーカーで医薬品、機能性表示食品、サプリメント、化粧品などの研究開発が進められている。