甲子園の女子マネ排除をも喝破した「八月ジャーナリズム」論

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「国民的記憶の五五年体制」

   また、評者が10年前に読んだときから強く印象に残るのが、第1章『降伏記念日から終戦記念日へー「断絶」を演出する新聞報道」だ。ここでは、戦後10年になる1955年を画期として、「八・一五終戦」という「八月ジャーナリズム」が定着し「国民的記憶の五五年体制」が確立していったことが鮮やかに、メディア史から読み解かれている。

   なお、第2章「玉音放送の古層―戦前と戦後をつなぐお盆ラジオ」では、甲子園野球中継に触れ、つい先日も女子マネージャーが練習に参加したことがルール違反と指摘され、ネット上でも話題になったが、「なぜ、女子マネージャーを排する試合中の『女人禁制』が頑なに守られていた」のかを喝破し、「現在の多くの国民が甲子園大会に鎮魂行事の真面目さを期待しているであろうことは想像に難くない」というのだ。そして、「内野ゴロでも一塁にヘッドスライディングをする高校野球の敢闘精神と旧日本軍の玉砕突撃は同じ集団儀礼と理解できる」と指摘する。

    マスメディアが創りだす「八月ジャーナリズム」の流れに乗りつつも、それを乗り越え、新たな視野や思考を自分に取り戻すために、この夏、必読の1冊だと思う。

経済官庁 AK

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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