「女50代」の悩ましい日々つづる 平松洋子さんが新著『彼女の家出』

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引っ張りだこのエッセイスト

   選挙の季節。白手袋を振りながら絶叫する補者たちのように、世の中の大問題を声高に語るわけではない。テロ事件を深刻な顔で報道するニュースキャスターのように、世界のこれからを心配しているわけではない。でも著者ら「女50代」にとっては、これこそ「大問題」ということが山のようにあるのだ。

   かつて井上陽水は、「傘がない」という歌で、都会では自殺する若者が増えているが、いまの自分の大問題は今日の雨だ、「傘がない」ということだとうたった。平松さんもまた静かに「女50代」の、今日の問題をつぶやく。

   本書は女性誌「ミセス」などの連載をまとめたものだ。かつて女性誌では、向田邦子さんを頂点に女性エッセイストの黄金時代があった。さらに上の世代の宇野千代さんらがいた。しかし世代が替わり、女性誌の部数減などで最近はやや不足気味だ。

    そんな中で平松さんは、いま最も引っ張りだこの1人だ。当初は料理雑誌で健筆をふるい、いまやテーマは専門分野の食文化だけでなく、暮らし、文芸などへと広がっている。2012年には『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞を受賞した。積極的に自分で取材し、インタビューもできるのが強みだ。近著に『食べる私』(文藝春秋、16年4月20日刊)がある。

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