「女50代」の悩ましい日々つづる 平松洋子さんが新著『彼女の家出』

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   世界のあちこちでテロが続く。日本はこれからどうなるのだろう。いろいろ気になるニュースはあるけれど、自分にとっての今の問題は別のこと――という人も少なくないのでは。人気エッセイスト、平松洋子さんの新刊『彼女の家出』(文化出版局、2016年7月17日刊)は世界や日本の動きとは無関係。50歳を過ぎていつのまにか還暦が近づいてきた女性の、悩ましい日々のつぶやきだ。

  • 『彼女の家出』(文化出版局、2016年7月17日刊)
    『彼女の家出』(文化出版局、2016年7月17日刊)
  • 『食べる私』(文藝春秋、16年4月20日刊)
    『食べる私』(文藝春秋、16年4月20日刊)
  • 『彼女の家出』(文化出版局、2016年7月17日刊)
  • 『食べる私』(文藝春秋、16年4月20日刊)

かわいそうなのは夫じゃない

   「女50代、しょっぱい現実にどう立ち向かう?」という文字が表紙の帯に踊る。本書で扱っているのは、「下着の捨てどき」「老眼鏡」「実家の空き部屋」「夜中の腕まくり」など著者と同世代の女性の、ささやかな日常の一コマだ。

   高価な舶来の下着に寿命が来た。かつて清水の舞台から飛び降りるつもりで購入しただけに、捨てられない。そんな悶々とした経験がある女性は少なくないことだろう。なぜか。「女50代」。この下着を捨てることは、自分の若さも捨てることになるからだ。さて、どうするか。

   久しぶりに実家に帰る。子供のころに使っていた自分の部屋がそのまま残っている。10代の自分がよみがえる。ボーイフレンドからの手紙。古びた勉強机。懐かしい思い出が満載だ。しかし今はすっかり老いた両親。布をかぶせられた家具。とっくに静止したはずの時間の扉が開いて、何かがもぞもぞと動き出す。

    表題の「女の家出」は、直前まで家族には内緒にしたまま突然、一人でロンドン旅行に行ってしまった女性の話だ。結婚して26年。彼女になにがあったのか。夫はただうろたえているばかり。でも、彼女の気持ち、よくわかるよ。かわいそうなのは夫じゃなくて、妻だったのだ!

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