田舎を訪問、現地に伝わる民謡などを取材
今日の曲、バレエ音楽「エスタンシア」は、「広い牧場」という意味のタイトルで、アルゼンチンの特徴的な草原「パンパ」と、そこに暮らす農民や、アルゼンチン風カウボーイ「ガウチョ」たちの1日の生活が描写されています。実際にヒナステラはアルゼンチンの田舎を訪問して現地に伝わる民謡などを取材しています。20世紀初頭の、欧州やアメリカの最先端のクラシックの技術も用いながら、全体は、濃厚なアルゼンチン風味の音楽となっています。もともとヒナステラに曲を委嘱したアメリカのバレエ団が解散してしまったため、バレエとしての初演まで11年もかかってしまいましたが、その間、作品がお蔵入りになってしまうのではないかと危惧した彼は、純粋な器楽曲として演奏できるように4曲を選んで「組曲」として発表したところ、これが大成功をおさめ、今でもヒナステラの代表曲として、大変良く演奏され、愛好されています。
近年では、ベネズエラの指揮者グスタボ・ドゥダメルが、同国の音楽教育システムの成果として結成された若い人たちによるシモン・ボリバル・オーケストラのアンコール曲目として、この組曲版の最終曲でもある「マランボ」をアクション入りで演奏したところ、クラシックらしからぬそのエキサイティングな演奏がYoutubeなどで人気が爆発し、さらに、人気が出ています。
アルゼンチンの広大な草原の夜明けを感じたり、ガウチョたちのエネルギッシュな踊りが眼前に見えるかのようなエキサイトなシーンもあるこの曲のおかげで、ヒナステラは、アルゼンチンを代表する作曲家となりました。
本田聖嗣