新しい知事は東京をどうしたいのか。いまの東京の何が問題なのか。2020年のオリンピックは大丈夫か?
ひとくちに東京と言っても、千差万別だ。変化も激しい。各区の「違い」に注目した『23区格差』(池田利道著、中公新書ラクレ、2015年11月刊)が話題になっている。これからの東京を考えるうえで参考になるデータと分析が満載だ。知事候補、新知事の必読本といえる。
23区の平均所得は全国平均の1.3倍
「港区904万円、足立区323万円」――新書の表紙の帯に驚きの数字が並ぶ。区によって大きく違う「所得水準」を暴露した。出典は総務省の「統計でみる市町村のすがた」(2012年)。納税義務者1人あたり課税対象所得額をもとにしている。
トップの港区に続くのが千代田区で763万円。続いて渋谷区684万円。この3区が日本全体の市区町村のベストスリーを占める。4位に兵庫県芦屋市が入るが、そのあとは中央区、文京区、目黒区、世田谷区とベスト8には23区が並ぶ。9位は東京都武蔵野市だが、10位は再び23区の新宿区で475万円。
「都民は裕福」と思うかもしれない。たしかに23区の平均所得水準は429万円。全国平均(321万円)の1.3倍だ。しかし、23区の中には「負け組」もいる。足立区が323万円、葛飾区330万円、北区342万円、荒川区343万円、江戸川区347万円、墨田区349万円など。23区の平均に届かない区が14もあるのだ。
では、最下位の足立区は本当に「負け組」なのか。全国の812市区の中の順位で言うと157位。上位2割に収まる。大阪市(192位)や札幌市(285位)よりも上にある。全国的に見れば立派な「勝ち組」と見ることもできる。