世代間格差を憂うべきは、財政赤字(公費の財源不足)の問題
本書では、現行の社会保障制度において、保険料の負担と給付の倍率に関する世代間格差は、本質的な問題ではないとしているが、これらの制度に投入されている公費が赤字国債で賄われていることは、「大変な問題」だと憂慮している。
2016年度の国の一般会計歳出総額は97兆円。これに対して、税収は58兆円にすぎず、不足分の28兆円を赤字国債で賄っている。その主因が社会保障であり(社会保障関係費は歳出全体の約3分の1に当たる32兆円)、財政の持続可能性を考える上で最大の課題となっている。
赤字国債の発行は、現在の世代が受益している社会保障に関する一部の負担を後世代に先送りするものであり、放置できない問題である。実際、国民が社会保障に対して感じている漠然とした不安は、年々拡大する社会保障によって、財政赤字が増えているにもかかわらず、その財源調達の目途がなかなか立たないことにあるといってよいだろう。
消費税率の引き上げは、まさにこうした財政の持続可能性を確保するための措置であったが、現時点では10%への引上げを前にして、足踏みをしている。
社会保障を担当する者として懸念することは、こうした財源調達がしっかりなされないと、そのとばっちりが、社会保障を抑制すべきといった一方的な議論へと発展していくことだ。
本書でも、繰り返し、この税財源を調達できていない問題を、現行の社会保障制度それ自体に問題がある(賦課方式であるがゆえに世代間の不公平が生じる)かのような議論に結びつけてはならないと釘を刺している。
世界最高水準の高齢化国でありながら、先進諸国と比べて、税や社会保険料の負担(国民負担率)が低い日本の現状を考えると、今、やるべきことは、必要な税負担について、あらゆる知恵をしぼり、国民に理解と納得を求めて、1日にも早く実現していくことだろう。
著者曰く、
「社会保障を守り、国民の生活を守るために、財務省の中で税を取り扱う主税局ガンバレ!」