積立方式なら世代間の不公平は生じないというのは「誤解」
本書では、年金制度を例にとり、世間に流布する以下のような意見が「誤解」であることを丁寧に説明している。
【誤解(1)】積立方式ならば、少子高齢化の影響を受けることなく世代間の不公平を回避できるはず。 ▼高齢者にとって重要なのは「お金」ではなく、その時々に必要な「生産物(物資やサービス)」(Output is Central)。いくら現役時代にお金を蓄えていても、少子高齢化が進めば、老後の時代には生産全体が減少し、高齢者に分配される生産物は減ってしまう。 ▼また、現役時代から資金を積み立てても、その貨幣価値は低下している可能性が高いし、高齢者割合が高い中では、高齢者が必要とする物資やサービスの相対価格は上昇してしまっている可能性もある。 【誤解(2)】賦課方式だと、負担した保険料ともらえる年金額との比率が世代間で大きく異なり、不公平である。 ▼年金は、そもそも、いくつまで生きるかわからないという「長生きリスク」や、長い老後生活の中で、インフレなど予期し得ない社会経済変動が生じることに備えるための「保険」。したがって、貯金や株・債券のように、投資額に対する将来の受取額を期待することは元来、馴染まない。 ▼加えて、公的年金が成熟化していく過程において、家族による私的扶養から社会的扶養へと徐々に転換していく経過を踏まえれば、負担した保険料ともらえる年金額の世代間格差が生じることはある意味で当然のこと。