今の日本と無縁ではない
日本列島がまだ縄文時代で、イノシシやシカを追いかけていたころ、すでにアクロポリスの丘にはパルテノン神殿が築かれていた。しかし古代のアテネで君主への道は平穏ではなかった。「陶片追放」というシステムで「僭主追放」が行われていたのだ。僭主になる恐れがある者の名を市民が陶片に書いて投票し、一定数を超えると追放となる。
本展では、追放された僭主「テミストクレス」の名前が刻まれた陶片も出品されている。都民の厳しい批判にさらされ、ついに辞意表明した東京都の舛添知事など、身につまされるのではないか。美術展には公用車で足しげく通っていたそうだから、ぜひとも実物を見てもらいたい。選んだ都民も、この機会にギリシャの叡智から学び直すことができそうだ。民主主義の源流を知るという意味では、今年の参議院議員選挙で新有権者になる18歳以上の若者も必見だろう。
紀元前8世紀には、オリンピアのゼウス宮殿で4年に一度の古代オリンピックが始まっていた。本展には「円盤投げ」や「ボクシング」、「競技者像」など、当時のアスリートたちをテーマにした作品も出品されている。2020年の東京オリンピックを前に「発祥の地」の原像を知る機会にもなる。
日本とは縁遠いように思われがちな「古代ギリシャ」――これらの出品作を眺めていると、実は無縁ではないということがわかる。文明の深いつながりを知るということからも、多種多様な出品物は、知的発見と示唆に富んでいる。