展示デザインを気鋭の建築家に依頼
6月11日開幕の「ポンピドゥー・センター傑作展」は、今年前半のこれらの大型展とはやや装いが異なる。フランスを代表する近現代美術の殿堂、ポンピドゥー・センターの傑作を集めたものだが、作品チョイスの仕方が変わっている。
1906年から77年までの「タイムライン」(時の流れ)を「1年1作家1作品」によって振り返るというものだ。たとえばシャガールは17年の「ワイングラスを掲げる二人の肖像」、ピカソは35年の「ミューズ」、マティスは48年の「大きな赤い室内」、ジャコメッティは56年の「存在の深淵を求めて」という具合だ。写真作品やモダンデザインが選ばれている年もあり、20世紀のアートの幅の広さを体感できる展観だ。
なぜか45年だけは、作品がなくて空白。これは原爆が投下され、20世紀最大のできごと、第二次世界大戦が終わった年であることを象徴しているのだろうか。
「ポンピドゥー」の類似例として、最近では、15年~16年初頭にかけて国内3会場を巡回した「大英博物館展」がある。「100のモノが語る世界の歴史」というサブタイトル。大英博物館が所蔵する世界各地の文化遺産約700万点のコレクションの中から100点を選び、200万年前から現代にいたる人類の歴史を再考したものだ。「目玉作品」に頼る展覧会とは味わいの異なる組み立てになっていた。
「ボッティチェリ展」は約30万人、「若冲」は約44万人。「カラヴァジョ」も5月25日に30万人を突破・・・など、展覧会はどうしても入場者数の多寡が話題になりがち。企画担当者としては集客数だけではなく、知恵の絞り具合もアピールしたいところだ。
「ポンピドゥー展」ではパリを拠点に活躍する気鋭の建築家、田根剛氏に展示デザインを依頼した。これも異例の試みだ。建築家がどのような展示空間を作り上げるのか。もう一つの見どころとなっている。