国が立ち上げを予定している「地方創生カレッジ」に関連して、地域活性化のこれからについて議論する「地方創生人材シンポジウム」(主催・日本生産性本部)が2016年6月5日、開催された。
地方創生カレッジは、地域振興を担う人材を育成するため、国が年内の創設を予定している、インターネットを使った教育プログラムだ。日本生産性本部が事業者となり、今後2~3年で1万人の受講、500人の「高度な専門性を有する」人材輩出を目指すとしている。
石破氏、今の状況は「静かな有事」
地方創生カレッジの「キックオフ」と位置付けられたこのシンポジウムには、石破茂・地方創生担当相、伊藤達也・内閣府大臣補佐官らも出席した。
石破氏は過去の「日本列島改造」「ふるさと創生」といった政策を引きつつ、人口減少社会に直面する現在ではこれらとは違い、「今の『地方創生』はやり損なうと国が潰れる」と危機感を強調、日本が直面するいわば「静かな有事」であるとの認識を示した。その上で、
「問題はどれだけの人が危機を認識し、責任を持つか。ケネディ元大統領が『合衆国が市民のために何をしてくれるかを問い給うな、諸君一人一人が合衆国のために何をできるかを問うてくれ』と演説しましたが、(地方創生も)まさにそのとおりだと思います」
などと語り、地方創生に主体的に取り組む必要性を強調した。
有識者もパネルディスカッション
後半のパネルディスカッションでは、間宮淑夫・内閣府地方創生推進室次長がモデレーターを務め、地域活性化や人材育成に取り組む有識者らが登壇した。
この中で、地域活性化センター理事長で、移住・交流推進機構業務執行理事の椎川忍氏は、
「私が地域のリーダーを育てていく中で感じていた問題点は、体系化されたプログラムがないこと。また自治体では、人材育成にお金が回りにくい。無関心なところさえある」
と現状の問題点を指摘し、地方創生カレッジへの期待をにじませた。
また、ローカルファースト研究所所長・関幸子氏は自身の経験から、地域振興をリードする人間には「分析能力・事業構想力・人脈・コミュニケーション力・資金調達能力・楽観主義」の6つの能力が欠かせないと語り、地方創生カレッジがそうした力を身に付けられる場になってほしい、と語った。
このほか、宇田左近氏(ビジネス・ブレークスルー大学副学長)、岡崎正信氏(オガールプラザ代表取締役)、見並陽一氏(公益社団法人日本観光振興協会理事長)ら、パネリストたちは具体的な事例を挙げながら、今地域にどういう人材が求められ、どう育てるのか、またそうした人材をどう生かすのか、といったテーマについて論じ合った。
日本生産性本部では今後、年内のカレッジ開講に向け準備を進めるとともに、こうしたシンポジウムを各地で開催することを計画している。