1番の有名曲「トロイメライ」は「夢」の意
シューマンは、作曲や演奏や指揮活動の他にも、若いころから音楽評論の仕事をしていました。同年代のショパンや、若きブラームスを楽壇に紹介したのも、評論家としてのシューマンでした。そのため、彼は熱血漢であったにもかかわらず、冷静に、客観的に、音楽や音楽家を評価する姿勢も常に持ち合わせていたのです。「子供の情景」は特にその姿勢が発揮された曲集と言えるかもしれません。
結婚にはまだまだ越えなければいけない数々のハードルがあり、実際にクララと結婚するまでには年月が必要だったものの、シューマンが「子供の情景」を作曲した1838年は充実した年で、ほかにも「クライスレリアーナ」や「幻想曲」、「ノヴェレッテン」といったシューマンの代表的なピアノ曲も同時期に完成されています。
これらの壮大な曲に交じって、将来の家庭生活を、それも「子供のいる」家庭生活を想像して創造された大人向けの曲集、「子供の情景」も、シューマンのピアノの代表曲となりました。そこには間違いなく、シューマンの大人としての「夢」が込められています。
「子供の情景」の中で1番有名な曲は、7曲目、「トロイメライ」です。文字通り、「夢」という題名のわずか2分30秒ほどの曲ですが、今でも世界中で愛され、演奏されています。
本田聖嗣