シューマンの"大人の事情"が生んだ「子供の情景」 婚約者の父である恩師が結婚を激しく反対...

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1番の有名曲「トロイメライ」は「夢」の意

   シューマンは、作曲や演奏や指揮活動の他にも、若いころから音楽評論の仕事をしていました。同年代のショパンや、若きブラームスを楽壇に紹介したのも、評論家としてのシューマンでした。そのため、彼は熱血漢であったにもかかわらず、冷静に、客観的に、音楽や音楽家を評価する姿勢も常に持ち合わせていたのです。「子供の情景」は特にその姿勢が発揮された曲集と言えるかもしれません。

   結婚にはまだまだ越えなければいけない数々のハードルがあり、実際にクララと結婚するまでには年月が必要だったものの、シューマンが「子供の情景」を作曲した1838年は充実した年で、ほかにも「クライスレリアーナ」や「幻想曲」、「ノヴェレッテン」といったシューマンの代表的なピアノ曲も同時期に完成されています。

   これらの壮大な曲に交じって、将来の家庭生活を、それも「子供のいる」家庭生活を想像して創造された大人向けの曲集、「子供の情景」も、シューマンのピアノの代表曲となりました。そこには間違いなく、シューマンの大人としての「夢」が込められています。

    「子供の情景」の中で1番有名な曲は、7曲目、「トロイメライ」です。文字通り、「夢」という題名のわずか2分30秒ほどの曲ですが、今でも世界中で愛され、演奏されています。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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