長女7歳の誕生日の贈り物として...その後次々と曲を書き足し43曲に
話は変わりますが、ピアノ曲を作曲する作曲家の多くが、「練習曲」や「子供のための作品」を作ります。自分の芸術性を問う代表作と同じに、プロの演奏には高い技術が要求されるピアノという楽器に人々をいざなうため、そして、オーディオのなかった19世紀においては、「家庭内音楽装置」として人気だったピアノをやさしく弾きこなすために、これらのジャンルは、作曲家にとって重要なジャンルだったのです。もう一つ、「難しい作品より楽譜が数売れるので収入になる」という裏の理由もありましたが。
「子供のためのアルバム」は、最初、シューマンの長女マリーエの7歳の誕生日の贈り物として作曲されました。その時は、7曲で、タイトルも「クリスマスのためのアルバム」とされていました。この作品を気に入っていたのか、シューマンはその後次々と曲を書き足し、最終的に2部43曲からなる「子供のためのアルバム」として出版されることになります。
今日の1曲は、その13曲目。子供向けの曲集ですから、他の曲はタイトルも「メロディ」とか「勇敢な騎手」とか、有名な「楽しき農夫」とか、子供にも理解できるシンプルなものが多くなっていますが...この曲だけは、「五月、いとしい五月よ!~お前はまたやってきた!」と長く、詩的なものとなっています。
冬が長く、暗く、寒い、高緯度地帯の国であるドイツでは、春が待ち遠しく本格的な春がやってくる5月はもっとも麗しい季節とされ、数多くの芸術作品に讃えられています。この曲も、子供でも弾けるように簡単な形式をとりながらも、5月を喜ぶ素直な感情が満ちた、素敵な曲となっています。
ロマン派の作曲家シューマンの、子供と5月への愛にあふれたこの曲集、「子供のためのアルバム」は今でも子供たちのピアノレパートリーの重要な作品となっています。
本田聖嗣