紹介者の人生もにじむ
「東京喫茶店研究所二代目所長」の難波里奈さんが、金曜日の夜に行くのは「喫茶亭 ルアン」。珍しい映画を上映することで知られるJR大森駅からすぐの映画館「キネカ大森」の近くにある。いかにも昭和の空気を醸し出す横丁。創業45年の歴史を持つ琥珀色の店内で、アルコール入りコーヒーを注文すると、いつもと違うレトロな夜が現れる。
ママ鉄・鉄道文化人の豊岡真澄さんが「トレインビュー」を楽しむのは「PRONTO田端店」。窓の外を乗客ゼロの新幹線がゆっくり通り過ぎる。検査や清掃のため、JR田端駅近くで本線から分岐している東京新幹線車両センターと行き来しているのだ。まるでパドックで名馬を見るようなもの。鉄道マニアにとってはたまらないスポットだ。
東京で最もアナーキーな街と言えば高円寺。作家で活動家の雨宮処凛さんが立ち寄るのは駅の近くの「Yonchome Cafe」。ここからは運がいいと、「反原発」や「放置自転車の撤去反対」などという自然発生的なデモを見ることができるそうだ。
シニア世代には懐かしい神保町の「ラドリオ」や上野の「古城」、西荻窪の「ダンテ」、阿佐ヶ谷「ヴィオロン」、桜木町「ダウンビート」、神田「エース」などのほか、銀座の新しいカフェなど登場する店は多彩だ。
紹介者も、アーティストのPUFFY、漫画家の江口寿史、野球評論家の江本孟紀、作家の保坂和志、映画監督の山本晋也、画家の山口晃の各氏ら多士済々。それぞれの思い出話に、店や街が育む文化と歴史だけでなく紹介者の人生もにじみ出ている。
付録として店のリストが一覧になった小冊子も。実際に行ってみたい人には便利なガイドブックとなっている。