3枚の粘土板に残された"最古のレシピ" 「食」にこだわる仏歴史学者が読み解き再現した"高級料理"

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庶民の食事はどのようなものであったか

   庶民の食事は何の資料も残っていないという。だが、近世に伝わるもっとも原始的な調理方法として、小麦粉を水でこね平たく丸めたものを、おき火に埋めて焼き上げたものなどが紹介される。また、肉類の直火焼きもあったことと推定される。

   こうした乏しい端緒が、著者の該博なる知識によってさまざまに展開していくのが本書の魅力だ。

   一例を挙げよう。著者は、庶民の食事について述べた後、エッラ叙事詩なるものを引く。その一節は「職業軍人の口を借りて、一介の兵士の誇り高く禁欲的な生活を称賛している」という。勇壮かつ野趣あふれる詩(部分)を転記しよう。

「真の男にとって、戦いに行くのは祭りのようなもの! 贅沢な町のパンは、灰で焼いた粗末なパン(カマーン・パン)に値しない! 甘味な高級ビールは、皮の水筒から飲む水に値しない!」

【霞が関官僚が読む本】現役の霞が関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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