シューベルトの交響曲、自ら命名の「悲劇的」は実は「運命的」だった?

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「悲愴」「運命」と同じハ短調を選択

   交響曲の調性を記すとき、それは、第1楽章の冒頭の調を指すことになっています。クラシック曲は、転調といって、1曲の中でいろいろな調に変化することがあたりまえですから、「何調」という表記は、最初の、ごく一部分の調を表すのに過ぎないわけですが、それでも、作曲家にとっては、その選択は重大な意味を持ちます。

   シューベルトは、交響曲第4番において、初めて「ハ短調」という「短調」を選択しました。明るい感じを与える長調、メジャーに対し、短調、マイナーは暗い感じを与えます。そして、同時に強い力を感じさせます。

   ベートーヴェンのピアノソナタ「悲愴」もハ短調で書かれています。そして、何より、彼の交響曲の名作、第5番「運命」(このタイトルは彼の命名によるものではありませんが)もハ短調で書かれているのです。

    そして、ベートーヴェンにとっても、交響曲第5番は、初めての「短調」で始まる交響曲でした。もちろん、それらのことを熟知していたベートーヴェンの熱烈なファン、シューベルトが、初めて「ハ短調」の交響曲をつくろうと思い立ったのには、彼の覚悟が感じられます。彼が名付けた「悲劇的」というタイトルの中には、「運命的」な要素が入っているといってもいいのではないでしょうか?

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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