食生活が豊かになった現代の日本で、最近やたらと悪者扱いされている成分の1つ――それが「プリン体」だ。含有量を抑えた食品をスーパーやコンビニの店頭で多く見かける。ところがプリン体はほとんどの食材に含まれ、アミノ酸や脂肪と並ぶ「3大うまみ成分」の1つといわれる。さらに生命活動の維持に重要な役割を担っている。摂取過多は健康に良くないとしても、現代人の抱く"悪者"イメージは少々偏っているようだ。
現代の日本人はプリン体とどう接していくべきか。東京・両国の両国東口クリニックの理事長、大山博司医師に話をうかがった。
プリン体はエネルギーの源。残りカスに抗酸化作用も
――スーパーやコンビニのお酒コーナーに行くと、「プリン体ゼロ」という言葉をよく見かけます。人体にとってプリン体は悪いものなのですか。
「われわれの体は細胞で構成され、その一つひとつに遺伝子が組み込まれています。そしてプリン体は遺伝子の構成成分の一つです。細胞はいろいろな活動をするときエネルギーを使います。例えば筋肉細胞は収縮して動きます。その際にプリン体の一種である『アデノシン三リン酸(ATP)』という物質をエネルギー源として使うのです。動物も植物も全てプリン体を持っています」
――プリン体は細胞のエネルギー源となっているだけでなく、プリン体から作られる「尿酸」に抗酸化作用があると聞きました。
「尿酸はプリン体を使った後の最終産物――いわばゴミです。ところがそのゴミは抗酸化物質でもあります。抗酸化といえばビタミンCが有名ですが、尿酸と違い人の体内で生成することができません。プリン体も尿酸もゼロでいいわけでは決してないのです」
――人間の体内で生成されるプリン体はどれくらいなのでしょう。
「プリン体の約8割は体内で生成されます。一方、食べ物から入るのは2割程度です。血液中の尿酸値を示す『血清尿酸値』(尿酸値)は7.0mg/dL未満が正常値の範囲内です。これを超えると『高尿酸血症』となるので注意した方がいいですね。尿酸がたまり続けると痛風のリスクがあります」