社会保障にとって大切な3条件、誇り・味方・居場所

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プロフェッショナルたちの実践

   本書の第2部では、著者が毎日新聞に2年半にわたり連載したコラム「私の社会保障論」に、写真や図を加えて持論を展開している。

   続々、日本の医療・介護・福祉のプロフェッショナルが登場する。

   山の上の特別養護老人ホームを解体して、地域包括ケアを実現した施設長、医療事故を「隠さない、逃げない、ごまかさない」を貫いた病院長、在宅ホスピスのパイオニア、在宅口腔ケアの道を切り拓いた歯科衛生士、逆転の発想「バリアアリー」でリハビリに革命を起こしたカリスマ作業療法士など、日本のケアを変えてきた人々の実践が紹介されている。

「一人では何もできない。でも、まず、一人から始めなければ」
「制度があるからやろうはダメ。いいものは国が追っかけてくる」
「理屈や命令では人はまとまりません。感動して仲間意識を持った時、みんな喜んで動き出す」

   ――など、プロフェッショナルの極意が伝えられる。

    第2部で取り上げられている実践の共通点は、「誇り」、「味方」、「居場所」である。一例を挙げれば、東京都内で約1250人のホームレスの支援を行っている自立支援センターふるさとの会。住まいの確保から日常生活の支援、そして在宅での看取りまで、家族のように支える。特筆すべきは、約270人のスタッフのうち約100人が、自らも支援を受ける障害や病気を抱えた人ということ(ケア付き就労)。お互いが支え合うことで、人間としての「誇り」を取り戻している。

   こうした日本の社会保障を切り拓いてきたパイオニアたちの実践を受けて、著者はこう語る。

「昔作られた法律の枠を超えたところにこそ、真の福祉があるようです。それを実現するために必要なのは、本人の願いへの想像力と、改革する度胸だと思えます」
「支える人が誇りと喜びをもって働き、支えられる人の誇りが守られる時、日本の社会保障制度は質と継続性を保つことができる」

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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