各論具体化の必要性について
第四、最後に指摘したいことは各論についてである。本書はフューチャー・デザインのアイデアを提示する総論的な諸章に加え、科学技術、水・大気、まちづくり、森林管理、地下水管理などの個別分野を扱った諸章から構成されている。各論の諸章において、総論で示したアイデアをいかに応用するのかもっと具体的に展開してほしかったといえば、高望みが過ぎるだろうか。
例えば、科学技術が長期投資の性格を持つことから、なんからの将来世代の関与が必要だということまではなんなく理解させられるとしても、「総合科学技術イノベーション会議の強化が必要です」と述べるとき、その強化がいかなる意味での強化なのかは漠然としたままである。将来世代の利害を踏まえたまちづくりという課題はpromisingであり、コンパクトシティ政策への着眼も適切である。しかしながら、仮想将来世代の目をどう取り込むことで、どのように問題が解決されるのか、明確なイメージを与えるには至っていない。同じ町の将来世代とはいえ、中心市街地と中山間地の住人では利害は異なるはずであるが、こうした対立をどう解きほぐすつもりなのか。また、町の意思決定システムのどこをどう変えればよいと考えているのだろうか。