■「新編 教えるということ」(大村はま著)
錬達の国語教師が若手教師に語った講演集である。専門職の職業倫理はどうあるべきか。一格違う覚悟を見せつけられる。職種は違えども読了後に背筋が伸びる思いであった。
全体の流れがあり迂闊な引用は憚られるが、本書の迫力をお伝えするには、やはり抜き書きが良い。例えば以下の如きである。
プロの矜持を知る
「本来の学習室である学校を学習室にしないで、『読んできましたか』というのは、『読む』といういちばん大事なことは家庭でやるわけですから、それでは家庭が学習の場所になり、学校は検査室になります。読んできたかどうかをみる検査室、読めるかどうか調べる所、おっかない場所ですね、学校は。私は、そういう教師が多いということを、たいへん強く感じます」
「教師だけはよくまあ言うと思います。『一生懸命指導しましたけれど、お宅のお子さん、どうもうまくおできになりません』 私は、そういうことは、教師として言うべきではない...(中略)...専門職だ、と胸を張って言うのでしたら...(中略)...うまくいかない責任は自分でとるべきであって、相手が勉強しないなどと、そんなことを言えるものではありません」
「そうです。あんなに喜んで、指折り数えて入学してきたのでしょう、子どもは。それが何日かたつと、もう劣等生のレッテルをはられて、親が呼び出されたりするとしたら、私は、『教師の面目いずこにありや』と思わざるをえません」