ラヴェルの「ヴォカリーズ」はハバネラ形式 そこに隠された悲しい歴史とは...

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"本国"スペインが逆輸入

   キューバは、ハイチが独立した後も長らくスペインの植民地でしたから、「ハバネラ」は本国スペインに間もなく逆輸入されました。スペインでも流行したハバネラを聞いたビゼーなどが、スペイン土着の民族歌謡と勘違いしてスペイン風オペラ「カルメン」に取り入れ、ハバネラは世界的に知られることになります。

    ラヴェルは、ビゼーよりは後の人ですから、ハバネラの背景も知っていたはずです。彼は、植民地の抑圧された人々の視点に立った曲なども残している人ですから、このヴォカリーズをハバネラ形式で書くにあたって、リズムの面白さやスペイン風のエキゾチックさだけでなく、そこはかとない悲しさまで盛り込んでいます。いつもどこか思いやりにあふれたあたたかな視点を持つラヴェルならではのヴォカリーズこと「ハバネラ」、短い曲ですが、傑作として人々に愛されています。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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