"本国"スペインが逆輸入
キューバは、ハイチが独立した後も長らくスペインの植民地でしたから、「ハバネラ」は本国スペインに間もなく逆輸入されました。スペインでも流行したハバネラを聞いたビゼーなどが、スペイン土着の民族歌謡と勘違いしてスペイン風オペラ「カルメン」に取り入れ、ハバネラは世界的に知られることになります。
ラヴェルは、ビゼーよりは後の人ですから、ハバネラの背景も知っていたはずです。彼は、植民地の抑圧された人々の視点に立った曲なども残している人ですから、このヴォカリーズをハバネラ形式で書くにあたって、リズムの面白さやスペイン風のエキゾチックさだけでなく、そこはかとない悲しさまで盛り込んでいます。いつもどこか思いやりにあふれたあたたかな視点を持つラヴェルならではのヴォカリーズこと「ハバネラ」、短い曲ですが、傑作として人々に愛されています。
本田聖嗣