北海道、秋田県に次いで食料自給率(カロリーベース)が高い山形県は、米の収穫量で全国4位にランクインしている。農業王国の山形が約10年の歳月をかけて開発したブランド米――それが「つや姫」だ。2016年2月に日本穀物検定協会が発表した平成27年(2015年)産米の食味ランキングでは、デビュー以来6年連続となる、最高評価「特A」を獲得した。
つや姫が高い評価を受けている理由とは――。PR大使の「つや姫レディ」5人が 3月17日にJ-CAST編集部を訪れ、その秘密を語った。
もちもちして甘さがある。おにぎりもおいしい
つや姫は、県内の稲作農家なら誰でも生産できる米ではない。一定の条件をクリアし、県知事が認定した農家しか作付けを許されない。しかも化学肥料や農薬を使用しない「有機栽培米」と、それらを極力抑えた「特別栽培米」の2つに限定されている。
つや姫レディらによると、味の特徴とおいしさの理由はアミノ酸とタンパク質にあるという。
「一口噛むともちもちしていて、甘さがあります。冷めてもおいしく食べられるので、おにぎりや弁当にも相性がいいんです」
「おいしさの理由の一つは、旨み成分であるアミノ酸が多く含まれていることです。アミノ酸の中には苦み成分も少し含まれていて、それによって甘みが感じやすくなっています」
「お米のおいしさの基準となるタンパク質についても、含有率6.4%以下だけを『つや姫』として市場に出荷しています」
タンパク質は水を通さない。つまりタンパク質が多く含まれる米は十分に吸水できず、ボソボソ硬いご飯に炊き上がってしまう。「つや姫」の生産者は、出荷前に玄米粗タンパク質の割合を測定する義務を負っている。基準に達しなかった米は米菓の原料に回される。
ただし水の量が多ければいいというものではない。下手をすると「おかゆ」のようになってしまうからだ。おいしく炊くコツについて、つや姫レディらは次のようにアドバイスした。
「個人の好みもありますが、炊飯器の目盛りの線があったら、一番下のところに合わせるとよいでしょう。スプーンで1、2杯すくって、なでらかにすると、粒感がしっかりしておいしく感じられると思います」
あとは研ぎすぎないことも重要なポイントだそう。
つや姫の収穫量は年間約4万トン。これは山形県内の総作付面積の約12%にすぎない。一方で人気のブランド米「魚沼産コシヒカリ」(新潟県)は約8万トン。つや姫の作付面積は年々拡大しており、一部のスーパーで取り扱っているが、流通量はこれからといったところ。
公式サイトのトップページには「つや姫取扱協力店」と「つや姫が食べられるお店」の店名・住所・電話番号が掲載されている。つや姫を確実に食べたいならここをチェックするのが早道だ。またアンテナショップ「おいしい山形プラザ」(東京都中央区)でも扱っている。
3月5日付の読売新聞によると、JA全農山形などは「つや姫」の海外展開も本格化させている。アメリカ・ハワイ州の日本食材を扱うスーパーでの常設販売が2月15日から始まった。また3月中に同州最大のコンビニチェーン「ABCストア」の売場にも並ぶ予定。アメリカ本土での販売も模索しているそうだ。
果物王国でもある山形。その理由は地形と気候にあり
山形は自然に恵まれ、気候も文化も多様性に富んでいる。蔵王、月山、鳥海、吾妻、飯豊、朝日といった山々に囲まれ、南から連なる米沢、山形、新庄の各盆地と庄内平野を最上川が流れている。冬は雪に閉ざされるが、春になると梅や桜が一気に咲き、雪解け水が土壌を潤す。各盆地は扇状地が発達し、水はけがよい。日本海に面した庄内平野は夏の日照時間が長い。夏と冬、昼と夜の寒暖の差が大きいのも特徴だ。
果物の生産は盛んで、さくらんぼと洋ナシの収穫量は全国1位。ぶどう・リンゴ・スイカが3位、メロンは4位、桃は5位となっている。畜産業も盛んで、置賜(おきたま)地方の特産品「米沢牛」は、松阪牛・神戸牛と並ぶ日本三大和牛の一つだ。養豚業も盛んで、「庄内豚」は銘柄豚の一つに数えられる。