渋谷パルコ(東京都渋谷区)で2016年3月12日、イギリスのエレクトリック・ミュージック・グループ「Underworld」(アンダーワールド)がライブパフォーマンス「Underworld Live:Shibuya Shibuya, we face a shining future」を開催した。抽選に当たった200人が招待された場所は――渋谷パルコPART3屋上の仮設ステージ。彼らはヘッドフォンを装着し、高揚感あふれるエレクトリックなリズムに酔いしれた。夜の渋谷に音漏れすることなく。
メイン会場の模様は、2次会場のミニスタジオ「2.5D」(PART1の6階)にライブ配信された。モバイルブランドGalaxyのゴーグル型HMD(ヘッドマウントディスプレイ)「Gear VR」が計9台用意され、約50人が順番に360度ライブストリーミングを楽しんだ。
「特等席気分」はGear VRならでは
今回のライブは、ロンドンに本拠を置き、Underworldが在籍している、世界的に活躍するデザイン集団「Tomato」の結成25周年を記念し、渋谷パルコを中心に渋谷の街と連携して開催される大型企画展「THE TOMATO PROJECT 25TH ANNIVERSARY EXHIBITION "O"」の一環で行われた。
Underworldは2人組。Karl Hyde(カール・ハイド)とRick Smith(リック・スミス)はTomatoの創立メンバーでもある。日本で2人は、11日に出演した「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に続き、2夜連続のパフォーマンスを披露した。16日にリリースされるアルバム「Barbara Barbara, we face a shining future(バーバラ・バーバラ、ウィ・フェイス・ア・シャイニング・フューチャー)」の収録曲も演奏され、企画展の初日に華を添えた。
記者は2次会場を取材した。メイン会場の模様がプロジェクターで壁3面に投影され、スピーカーから音声が流れる。限定ライブを同時体験できただけで満足した様子のファンも。
Gear VRの映像はある面でその上を行くものだった。客席最前列からステージ上までの範囲に3台のカメラが設置され、Gear VRを付けることで360度の合成映像を見られる。サウンドは、イギリスの高級オーディオメーカー、Bowers & Wilkins(B&W、バウワース・アンド・ウィルキンス)製P5ハイファイヘッドフォンを接続して聴く。
半球形の回転イス「TELEPOD」に座ると、コンテンツの音と連動して振動が伝わる。記者も体験したところ、ライブの臨場感は申し分なく、客席の最前列――いや、Underworldのメンバーになったような気分が味わえた。ステージの隅々まで見たくて、自然とイスを左右に振ったり首を上下に動かしたりしているうちに、時間はあっという間に過ぎた。
2次会場から出てきた男性に記者は声をかけた。彼は電器店で複数のHMDを試したことがあるそうで、記者よりもVRに詳しかった。
「すごいですね。(Gear VRは)他のHMDと比べてレスポンスが断然いい。機械の映像を見ているという感覚はなく、『360度......うわっ!』と感じるくらい良かったです。Underworldのファンなので、ライブはもう最高でしたよ」
一方で気になった点もあったそうだ。
「ラグタイムというか、フロアで流れている曲とVRで流れている音にズレがあるのに気づきました。そこがもうちょっと一体感あればと」
これはHMDの問題というよりライブ配信の宿命というべきだろう。1つの伝達方法に絞っていれば気づかれなかったかもしれない。