ボランティア活用や自費による介護サービスの利用―過度の期待はできない―
最近、「買い物」「電球の取り換え」「簡単な掃除」などの生活支援サービスを地域の主婦や退職高齢者などが担う有償ボランティアなどの取組みが注目されている。
著者曰く、このような有償ボランティアはもっと活性化させていくべきだが、同時に、介護保険サービスの代替にはならないことに留意すべきとする。これらはあくまでも補完的な位置づけであり公的サービスという基盤が整備されてはじめて機能するというのだ。
民生委員の未充足問題をはじめ、「互助」によるインフォーマル・サービスの担い手不足は全国的な傾向である。実際、これまでボランティアの担い手であった子育て後の専業主婦や退職高齢者は、今日では、女性や高齢者の就労率の上昇により、地域からどんどん姿を消しつつある。「あまり過度の期待はできない」のだ。
また、都市部を中心に、自費で利用できる家政婦やホームヘルプサービスを利用する者も増えているという。介護保険で認められる部分は介護保険を活用し、認められない部分のみ自費サービスを使う「混合介護」形態での利用もみられる。
著者は、こうした現実について、以下の3つの課題を指摘する。
①要介護高齢者の経済力によって利用できるサービスに格差が生じる。
②地域格差(富裕層の多い都市部と地方での格差)が生じる。
③自費による介護サービスに対しては自治体の関与がなく、消費者保護的な措置が採れない。
現段階で、介護保険の利用限度額を超えている事例は重度者でも6%程度であり、こうした自費による利用は一般的ではないが、①や②のような格差の問題は社会保障の琴線に触れるだけに悩ましい課題だ。