在宅介護を可能とする条件―「在宅」と「施設」を車の両輪として―
未だに「介護」といえば、「施設」がイメージされやすく、最期は「施設で」と割り切る高齢者が多いという。むしろ、介護保険の創設によって、保険料を納めているから施設に入れるだろうといった意識が強くなり、「施設志向」が高まっている傾向は否めないとのこと。「在宅介護は理想だが、十分な在宅サービスが享受できない以上、家族に迷惑をかけてしまうので、寝たきりになったら施設に入りたい」という思いだそうだ。
しかし、「可能ならば在宅で」というのが、多くの高齢者自身の本音である。
著者は、繰り返し、「在宅」か「施設」といった二分法的な考え方ではなく、「在宅介護」と「施設介護」を相互に組み合わさることで、「在宅介護」が普及し多くの要介護高齢者が住み慣れた地域や自宅で最期を迎えることができると指摘する。
実際、親の介護を在宅で担うか、施設に入所させるかを迷っている家族の中には、「いつでも施設で受け入れてもらえる環境があれば、とりあえず在宅で介護をやってみよう」と考える者が多いという。独居高齢者も、何かあればすぐに施設に入れるといった安心感があれば「とりあえずヘルパーさんを頼んで在宅で介護生活を送る」という方もいる。
つまり、在宅介護を受ける高齢者が万一の際に受け入れ可能な状況をつくることが重要であり、著者は、
①大都市部にもっと多くのショートステイ施設を整備すべき
②「施設」に在宅サービス部門の併設を義務付け、一体的なサービス提供を促すべき
――と主張する。