徴用を逃れての志願は「自由意志」か
気がかりな証言もある。
「徴用がかかりそうになり大久野島に行くことにしました」といった、徴用逃れの入職だ。この証言は男女を問わず多数ある。志願と比べ徴用工は過酷な扱いをされるからだという。
だが仕事内容は極秘で、予め知り得なかった。毒ガスを製造する、ましてやそれに曝露する危険が常にあるなどとは想像もしなかった方々が多かったはずだ。
更に退職は簡単には許されなかったとの証言も散見される。些細なことで憲兵隊に痛めつけられたとの証言もある。
この苦役は到底、自由意志での従事とは言えぬ。この蟻地獄の如き募集、あまりにあざといではないか。
こうした事実を見るにつけ、自虐史観への反作用として戦前日本を殊更に美化する風潮には、強い違和感を覚える。