「言霊信仰」に囚われぬ議論を 敢えて「戦前に戻ること」で「少子化」問題の本質を知る

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「幸福で安定した家族を築ける支援も政府の仕事」

   一方、リベラルな経済学者として論陣を展開している福島清彦氏の新書「日本経済の『質』はなぜ世界最高なのか」(PHP新書 2016年2月)は、「世界各国はすでに経済拡大よりも国民の幸福度を高める戦略を採っている」という。そして、日本が常にお手本にするイギリスでは、財務省の官僚たちが、金融資本、学歴を中心とした古典的な人的資本、人との関係を築く能力を中心としたソフトな人的資本、社会関係資本(信頼と協力の関係を築きやすくするような、他人とのネットワークづくりと行動の習慣)、および文化的資本が経済を発展させ、社会を安定させると分析して、国の政策を遂行しているという。

   そして、社会関係資本の最小単位は家族であり、幸福で安定した家族を築けるよう支援することも政府の仕事となるとする。国民に"お節介"を焼くことが、情報社会の到来により、政府の仕事になったというのだ。人的資本の充実のため、子供を育てることができる広い住居の提供、公的教育の拡充を提案している。

    幅広い立場の論客が期せずして、人口政策・人的資本の重要性を指摘する。「言霊信仰」に囚われず、日本の将来を公に真摯かつ率直にもっと議論できないものなのだろうか。

経済官庁(総務課長級 出向中)AK

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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