花粉症対策の切り札は「乳酸菌」だった 胃腸科医が語る「毎日ヨーグルト」のすすめ

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   冬の終わりから春にかけて多くの日本人を困らせる花粉症は、ある日突然発症して、数か月にわたり患者を悩ます。無症状だからといって安心はできない。花粉の抗体を持っていても発症に至らない"予備軍"かもしれないからだ。なんらかの兆候があるときは早めに耳鼻咽喉科を受診すべき。症状の程度と患者の希望に応じたさまざまな治療法があり、内服薬や点鼻薬・点眼薬といった薬物治療、レーザー手術は広く行われている。最近では完治を目指す「舌下免疫療法」に多くの期待が寄せられている。

   一方で注目されるのがセルフケアだ。手っ取り早い手段は、抗原である花粉をシャットアウト。マスクやメガネの着用や、帰宅時に花粉を室内にもちこまないことでだいぶ楽になる。「食事」も外せない民間療法だ。特定の食べ物をとり続けたところ症状が軽くなった経験談は、多くのメディアで取り上げられている。

   ヨーグルトはその代表格といえよう。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内環境を整えて、花粉症をはじめとする不快な症状を軽減する。また毎日食べれば予防にもつながる――といわれる。もちろんヨーグルトは薬ではない。食べる量と期間、そして効用はどれくらいか――。「新宿大腸クリニック」(東京都渋谷区代々木)の院長である後藤利夫医師に話を聞いた。

  • ヨーグルトが花粉症に効く!?(編集部撮影)
    ヨーグルトが花粉症に効く!?(編集部撮影)
  • 後藤利夫医師は1988年東京大学医学部卒業。約4万件以上の大腸内視鏡無事故のベテラン医師
    後藤利夫医師は1988年東京大学医学部卒業。約4万件以上の大腸内視鏡無事故のベテラン医師
  • 「新宿大腸クリニック」の公式サイト
    「新宿大腸クリニック」の公式サイト
  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その1(イラストは編集部作成)
    「花粉症の症状が起きるメカニズム」その1(イラストは編集部作成)
  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その2
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  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その3
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  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その4
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  • 花粉症患者はヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスが崩れている
    花粉症患者はヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスが崩れている
  • 毎日のヨーグルト摂取で、Th1・Th2のバランスがよくなる
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  • ヨーグルトが花粉症に効く!?(編集部撮影)
  • 後藤利夫医師は1988年東京大学医学部卒業。約4万件以上の大腸内視鏡無事故のベテラン医師
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  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その1(イラストは編集部作成)
  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その2
  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その3
  • 「花粉症の症状が起きるメカニズム」その4
  • 花粉症患者はヘルパーT細胞のTh1とTh2のバランスが崩れている
  • 毎日のヨーグルト摂取で、Th1・Th2のバランスがよくなる

花粉症の原因は免疫バランスの悪さにある

   ――花粉症は病気といえるのでしょうか。またどのような特徴があるのですか。

   「花粉は植物が出すタンパク質です。それが体内に入ると異物としてとらえてしまい、免疫反応が起きるアレルギー性疾患です。免疫バランスが崩れている人に起きやすくなります。くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが4大症状です」

   「具体的なメカニズムは、花粉が体内に侵入すると、その情報が免疫を司るTh2という細胞に伝えられ、IgE抗体という物質を作らせます。このIgE抗体は花粉に対するアンテナとなって、再び花粉が体内に入ると、ヒスタミンなどの化学物質を出させて花粉症を起こします」

   「このようにアレルギーの発症に関係の深いTh2のほかに、実はTh1という免疫細胞があります。これは主にウィルスや細菌と戦う役割があります。両者はシーソーのような関係で、お互いが抑制的に働いています。アレルギー体質の人はTh2が優位でTh1が抑えられている状態となっており、現代人に多いと言われています」

   ――著著の「あなたの知らない乳酸菌力」で、ヨーグルトに含まれる乳酸菌が花粉症患者の体質を改善し、症状の緩和につながると書かれています。いったいどのような働きがあるのでしょうか。

   「乳酸菌は外から入ってくる異物と戦う免疫細胞のTh1の活性を上げてくれます。特定の乳酸菌には、このTh1細胞の増殖を高め、ウィルスやがん細胞と戦うNK(ナチュラルキラー)細胞の活性を促すことが確認されています。また、Th1が活性化するとアレルギーと関係の深いTh2の動きが抑制されるので、免疫のバランスが整えられるのです」

   ――花粉症の症状が起きるのは鼻やのど、目です。腸は関係ないように思えて、実はそうではないのですね。

   「口から肛門は消化管で一つにつながっています。内壁は粘膜になっていて、そこにすむ免疫細胞が異物からガードします。なかでも腸は免疫細胞の70%が集中する最大の免疫器官です。3歳までに腸内に細菌が入ってこないと免疫力、とくにTh1が発達せず、アレルギー体質になりやすくなると考えられています」

   「現代の日本は清潔になりすぎたため、幼少時における感染症が減り、外からの異物と戦うTh1活性を上げる機会が減っています。そのためTh1よりもTh2が優位になる人が多く、アレルギーを起こしやすい体質の方が多くなったと考えられます」

   「雑菌に触れる機会が少ないまま成長した人も、食品で腸を強くすることはできます。ヨーグルトは発酵食品で体が吸収しやすい。前の晩飲みすぎた人のような、消化能力が落ちている人にも適しています」

薬は対処療法。根本的な改善は別にある

   ――食事による免疫力向上は、効果が分かるまで時間のかかる感じもしますが。

   「症状の重い方や、すぐに治したい方はもちろん薬の使用を勧めます。一方で、根本的な体質改善については、毎日の食事からこつこつと行うことの方が健康的だと思います」

   「普段から乳酸菌をとって腸内環境を整えて予防する。これが本当の健康ではないでしょうか。今流行っている花粉症だけでなく、他のアレルギー疾患やがん、感染症――いろんなわざわいを予防することにもつながります」

   ――別の著書の「腸をきれいにする特効法101」には"ヨーグルトは毎日200gがおすすめ"と書いてありますが、たくさんは食べられないという人はどうしたらいいのでしょう。

   「薬ではないので、量の目安は厳密にはありません。それよりも毎日とることが重要です。とくに病み上がりや下痢をした後、抗生物質服用後、ダイエット後の復食期、大腸検査後は善玉菌が排出されていますので、排出されてしまった善玉菌を入れる意味でもヨーグルトをお勧めしています。時間は食前よりも食後、あとはストレスを感じた後なども食べるといいでしょう」

   ――ヨーグルト以外では、日本茶や甜茶(てんちゃ)、大豆食品、シソも効果があると説く人がいます。これらの摂取も花粉症対策につながりますか。

   「お茶に含まれるカテキン、甜茶に含まれるポリフェノール、大豆食品に含まれるイソフラボン、シソに含まれるロズマリン酸。これらが刺激となって免疫が上がり、症状を軽減しても何ら不思議ではありません。あとは漬け物、キムチ、みそ、しょうゆなどの発酵食品もいいでしょう。食品には副作用の心配は少ないですので、毎日の食事に取り入れてみては」

   ――スーパーやコンビニに行くと多種多様なヨーグルトが並んでいます。つるんとしたカップ型やドリンク、とろりとしたソフト型......。いったいどれを選べばいいのでしょう。

   「形状はあまり関係ありません。注目すべきは菌の特性です。ヨーグルトの中には機能を表示した商品があります。よく観察して、良さそうと思ったものを選べばよいでしょう。まずは2週間くらい食べてみて、体の変化を経過観察してみてください。腸内には約100兆の菌がいて、重さは約1キロもあるのです。その生態系は複雑で、合う・合わないがありえます。あまり効果が感じられなかったら、別の商品を試せばいいと思います」

   ――読者に対するメッセージを最後にお願いします。

   「花粉症に備えるなら、今からでもヨーグルトをとるべきです。『不老長寿にはヨーグルト』ともいわれる食品なので、年中食べる習慣をつければいいと思いますよ」

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