日本の20代はもっとビールを飲みたいと思っている――。株式会社共同通信社はこのほど、「ビールに関する飲用実態調査」(以下「ビール飲用実態調査」)の結果を発表したが、それによると、若年層を中心にビール回帰の動きがあることがわかった。
さまざまな種類のお酒が流通している日本で、最も消費されているのはビールだ。発泡酒や第3のビールを含むビール類全体で見ると、15年の大手5社の販売実績は前年比で0.5%減だったが、ビールに限っては0.1%増えた。前年を上回ったのは1996年以来19年ぶり。人口減少でマーケットが縮小傾向にあるなか、ビールの売れ行きはなぜ伸びたのか。
ビール会社の新施策が奏功、若者の本物志向も好影響か
プラスに転じた要因はいくつか挙げられる。2月3日に発表された「ビール飲用実態調査」の結果によれば、目に見える変化として大きいのは、トップを走るアサヒビールのシェアを切り崩すそうとライバル3社が新施策を仕掛け、それらが功を奏したことにある。キリンは「一番搾り」に注力し、21年ぶりの前年比プラスとなった。サントリーは「ザ・モルツ」を9月に発売したところ、当初販売計画の1.6倍も売れ、前年比104.9%と最も伸長。サッポロビールは「黒ラベル」の中身を刷新した結果、21年ぶりに前年の販売実績を超えた。
消費者、とくに若者のビールに対する嗜好の変化も影響していると見られる。ビール飲用実態調査で月1回以上ビールを飲む人に「今後ビールを飲む量は増えそうか」と尋ねたところ、全体では「変わらない」と答えた層が大半を占めたのに対し、20代では45.5%が「増えそう」「やや増えそう」と回答した。
酒税率に起因する値段の安さにより、ビールの代わりに発泡酒や第3のビールを飲む人は相変わらず多い。しかし「少々高くても本物を飲みたい」と考える人が若者を中心に徐々に増えているよう。それをうかがわせるのが小規模なビール醸造所で生まれるクラフトビールだろう。マーケットシェアはごくわずかだが、色・味・香と個性豊かな点が消費者に受け入れられ、スーパーやコンビニの陳列棚で徐々に存在感を増しているという。
こうした流れに乗ろうと大手メーカーも凝ったビールを次々と発売中だ。例えばサントリーは、世界に100種類以上あるビールの種類を通じて、多彩で個性的な味わいを楽しめる「クラフトセレクトシリーズ」を昨年5月から数量限定で展開している。