日本で最も自殺の少ない町の秘密を解き明かす

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「生き心地」の良い環境に身を置くために

   本書の中で、著者は、海部町の町民気質を見事に描写している。

   「彼らは概して人なつこい。おしゃべり好きである」

    「周囲の人や世の中の出来事に対して興味津々であり、噂話で盛り上がったかと思うと、同じ速度で冷めて、そして飽きる」

   「統制されるのが嫌いである。赤い羽根募金のような"わけのわからないもの"には百円たりとも投じたくないと言い張って役場の担当者を困らせる」

   「年長者を敬うという一般的な習慣はあるものの、年齢が上だからといって自動的に偉くなるとは思っていない心の内が、ばれている」

   「お上を畏れていないことも、ばればれである。おそらく、隠す気もあまりないのだろうと思う」

   「いわゆる卑屈さというものが見当たらない。そして彼らは、弱音を吐くという行為について、それが必ずしも恥であるとは思っていない」

   こんな人々の暮らす地域は、強烈な個性こそないだろうが、伸びやかで、暮らしやすそうだ。

   本書で説明された5つの自殺予防因子は、特別に高尚でも複雑でもない。いずれも単純で誰でも理解できることだ。著者が言うように、「いいとこ取り」で一人ひとりが明日からでもすぐに取り入れることができる内容だ。

   自分も、こんな「住み心地」の良い環境の一員となってみたいものだと思う。

JOJO(厚生労働省)

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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