「カントゥス・アルティクス」=「極北の歌」
この曲の題名、「カントゥス・アルティクス」作品61は1973年の作品で、題名は、ラテン語で「極北の歌」という意味です。副題として、鳥たちとオーケストラのための協奏曲と名付けられていますが、実際の鳥を演奏会場に連れてきて意のままに歌わせることは不可能ですので、鳥の声は録音を使います。作曲者自身が録音機を持って、北の土地を歩き回って録音してきた素材を使うのです。全体で17分程度のあまり長くない曲ですが、3楽章にわけられ、それぞれ、「湿地」「メランコリー」「白鳥の渡り」という題名がつけられています。題名だけでも、フィンランドの北のほうの風景を思い起こされますね。管楽器は、鳥の声を模したりしますが、弦楽器は、ほとんど静かに音を出すだけで、北極圏の土地の静かさを演出しています。副題からすると鳥たちが主役のようにも思えますが、聴いてみると、鳥はあくまで風景の一部で、北の大地の厳しい寒さや、静かな風景が想像される独特の雰囲気に包まれます。
ラウタヴァーラはほかにもたくさん作品を書いていますが、北欧の作曲家らしい、北の大地を描いたこの曲が、一番有名で、よく演奏され、代表作となっています。少しさびしさを感じますが、冬が厳しいこの時期、さらに北の大地に思いを馳せながら、聴いてみたい幻想的な曲です。
本田聖嗣