マスメディアがつくる「世論」 市民の信用過剰が生む不健全スパイラル

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変化への対応力の弱まりが衰亡の始まり

   序章が、「『知っているようで知らない日本』のおさらい」で、やや専門的だが、日本は、購買力平価ベースのGDPでは、アメリカ、中国、インドについですでに4位であること、市民1人あたりの生活水準は、G7のなかでは、イタリアについでビリから2番目であること、アジアでも、ブルネイ、シンガポール、香港、台湾についで5位で、もうすぐ韓国に抜かれる見込みであることがわかる。また、世界一の「超高齢化」社会になることも示される。

   冒頭第1章は、まさに「世界一の公的借金大国ニッポン」だ。第3章の「マスメディアを信用しすぎる日本人」で、出口氏は、「日本人がマスメディアを信頼しきっている限り、『世論』と呼ばれるものはマスメディアがつくり上げることとほとんど同義です。その『世論』をつくるマスメディアを政府が抱え込もうとするのは、不健全ではありますが、しょうがないことかもしれません。」とし、「その連鎖を断ち切るには、私たち市民が知恵をつけ、判断力を磨き、マスメディアに対しても厳しい目を向けられるよう成熟する必要がありそうです。」とする。第4章の「日本は世界に稀な小さい政府!」という明らかな事実も何故かマスメディアではほとんど報じられない。

   優れた政治学者がローマ・ヴェネツィアの歴史を振り返り、アメリカや日本の行くすえを洞察した「文明が衰亡するとき」(高坂正堯著 新潮選書 1981年)は、出口氏のいう「ヨコ軸・タテ軸」をしっかり踏まえた珠玉の1冊だ。変化への対応力の弱まりが衰亡の始まりだという。この卓越した洞察を新年にあらためてかみしめたい。

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【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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