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素質を"開花"させるには

   本書の半分は著者が監督として選手をどう見極めてきたかについて描かれているが、もう半分は(極端な言い方をすれば)こうした能力に欠ける選手をどう指導してきたかについて描かれている。このコラムの読者の方々の職場にも共通するところはあるかと思うが、どこの職場でも「頭を使ってプレーしているタイプ」と「素質だけで何も考えていないタイプ」という分類はできると思う。自身の経験で言っても、前者の場合、ミスしても怒らないほうが良い。前者のタイプは、何でミスしたのか、何が悪かったのか、自分で考えるだろうし、そうしたプロセスが、同様のミスをなくすだけでなく、本人の後々の成長につながるからである。他方、後者はどうだろうか。ここでは実名は伏せるが、「素質だけで漫然と勝負」していたあるホームランバッターに対して野村監督が「野球とは何か?」「バッティングとは何か?」といった根源的な問を投げかけるやりとりが描かれている。現にこのバッターはその後ホームラン王のタイトルを獲得するのだが、どこの職場でも、指導的な立場にある人間は、こうした本質的な質問を投げかけ、本人に気づかせる作業が必要なのだろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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