「万能の天才」に迫る
一方の「レオナルド・ダ・ヴィンチ展」。こちらはボッティチェリとほぼ同時期に活躍したレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)の「万能の天才」ぶりに迫る特別展だ。目玉は円熟期の油彩画「糸巻きの聖母」。もちろん日本初公開だ。ほかに素描7点、直筆ノート、弟子らの作品70点などで構成している。
ダ・ヴィンチの現存絵画は15点ほどといわれ、「糸巻きの聖母」はその中の貴重な1点。英国の貴族が代々所蔵しており、英国外での展示は実に77年ぶりだという。この展覧会もやはり、日本とイタリアの国交樹立150周年記念の特別展となっている。
ダ・ヴィンチといえば「モナリザ」、ボッティチェリなら「春」や「ヴィーナスの誕生」があまりにも有名だ。残念ながらこれらの超弩級の名作はもはや日本に来ることはないといわれる。美術関係者によると、事実上、永久に「持ち出し禁止」。二人の場合、それらに準ずる作品でさえも借りるのは簡単ではない。
2007年に、ダ・ヴィンチの傑作「受胎告知」(ウフィツィ美術館蔵)が東京国立博物館の「ダ・ヴィンチ展」で日本初公開されたことがあった。「異例中の異例」といわれた。そのときイタリアでは国会議員が貸し出しを強く問題視、来日直前まで議論になった。
それだけに今回、関係者の努力で「書物の聖母」を中心とするボッティチェリの傑作群やダ・ヴィンチの「糸巻きの聖母」が展示されることになったのは画期的な出来事だ。またとない意義深い機会といえる。約500年前のイタリアで、たまたま同時期に活躍した二人の天才――実際に会場に足を運んで、自分の眼でガチンコ対決の醍醐味を味わいたいものだ。