マルチな才能で勝負
「芸人」ではないが、作者の知名度という点では『異類婚姻譚(いるいこんいんたん)』の本谷有希子氏が抜きんでているかもしれない。1979年石川県生まれ。2000年から「劇団、本谷有希子」を主宰し、作・演出を手掛ける。07年『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞を受賞。09年『幸せ最高ありがとうマジで!』で第53回岸田國士戯曲賞を受賞。11年小説『ぬるい毒』で第33回野間文芸新人賞、13年『嵐のピクニック』で第7回大江健三郎賞、14年『自分を好きになる方法』で第27回三島由紀夫賞を受賞と、豊富な受賞歴を誇る。
作家だけでなく、劇作家、演出家、女優、声優という肩書もあり、ラジオ番組「本谷有希子のオールナイトニッポン」のパーソナリティを務めていたこともある。マルチな才能の持ち主で今回で4回目の芥川賞候補だ。受賞すれば「話題の人」にりそうだ。
変わり種では『シェア』の加藤秀行氏がいる。1983年鳥取県生まれ。東大経済学部卒業後、戦略コンサルティングファームに勤務。2015年『サバイブ』で第120回文學界新人賞を受賞した。上田氏と同じく、ビジネスマンと作家の二刀流の人だ。
このほか、『家へ』の石田千氏、『ホモサピエンスの瞬間』の松波太郎氏がノミネートされている。ともに3度目の芥川賞候補だけに、「今度こそ」の思いだろう。