「ダブル受賞」でノーベル賞を心待ちに
朝日賞は、各界からの推薦をもとに、学識経験者を交えた選考委員会が審査・選定する。この「各界からの推薦」で上がってくる候補者が膨大な数になるという。そこからさらに綿密な事前調査をしてジャンルごとに有力候補を絞り込んでいく。幅広く網掛けしているので、ノーベル賞の対象になるような人はたいがい、朝日賞の有力候補者として把握されることになるという。
このほか有力な賞としては「日本学士院賞」がある。学術面で特にすぐれた論文や著書、研究業績を対象に100年余の歴史を持つ。毎年9人前後に授けられる。日本の学術賞としては最も権威ある賞だ。
受賞後にノーベル賞をもらった人数は、朝日賞と同数の13人。ただし、朝永氏、江崎氏、小柴氏、山中氏、野依氏、梶田氏など7氏は、朝日賞の方が先行している。一方、湯川秀樹(学士院恩賜賞)、福井謙一氏ら3氏は学士院賞のみ。大村氏ら3氏は学士院賞が先行しており、朝日賞とはほぼ互角の闘いだ。
もっとも、毎年の受賞者数は、学士院賞が朝日賞の約2倍。理系に限ると、学士院賞が毎年7~8人に対し、朝日賞は2人程度。したがって、ノーベル賞の受賞確率は朝日賞の方がはるかに高い。
ちなみに、このところ毎年のようにノーベル賞の有力候補として話題になる人――作家の村上春樹氏や、分子生物学の森和俊氏はいずれも朝日賞を受賞している。免疫学の坂口志文氏、物性物理学の十倉好紀氏、細胞生物学の竹市雅俊氏、生物学の大隅良典氏、光電気化学の藤嶋昭氏など、すでに朝日賞と学士院賞(恩賜賞)の両方を受賞している人は20人余。なかでも免疫学の岸本忠三氏、電子顕微鏡学の飯島澄男氏、分子生物学の柳田充弘氏、医化学の本庶佑氏らは両賞に加えて文化勲章も。来年度以降のノーベル賞では引き続き目を離せない人たちだ。