軽減税率導入の真相...「政府不信」が複雑にする税制改革

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自公民3党合意でそれぞれの党が何を譲り何を通したのか

   透徹した視野と卓越した取材力で定評のある清水真人氏(日経新聞編集委員)の「消費税 政治と官との『十年戦争』」(新潮文庫 2015年12月)が文庫となり増補されてちょうど出た。軽減税率が、政権内の大きな摩擦を生んでいる経緯については、この第6章「谷垣禎一 『近いうち解散』の結末」の自民・公明・民主3党の合意形成にいたる迫真の記述を読むことをまずはお勧めする。また、「消費税日記~検証 増税786日の攻防」(伊藤裕香子著 プレジデント社 2013年6月)は、この3党合意で、それぞれの党が何を譲り、何を通したかを知るのに有益だ。これまで増減税セットの中で進められてきた消費税をはじめとする税制改正の流れに、社会保障のために増税を明確に断行するという大きな転機を生み出した、谷垣禎一氏、野田佳彦氏などキーマンのインタビューを含む、朝日新聞の担当記者の労作だ。

   いまの時点での、低所得者対策としての軽減税率導入を、有力な経済学者たちが反対する理由を深く理解するには、財政専門家の手になる「日本財政の現代史」(全3巻 有斐閣 2014年4月~6月)の第Ⅱ巻第9章「付加価値税の導入過程と逆説的性格」(田尾真一執筆)が、加藤淳子東大教授の卓越した英文での研究成果を踏まえた論考で、最適だと思う。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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