成功するか、築地ブランドから豊洲ブランドへの転換
魚市場を取り巻く環境は決して明るくない。豊洲移転を期に廃業する水産仲卸業者は70近くにのぼる。主役となる魚は減少し、国内外の漁業規制が強化され、消費者の魚離れは止まらず、市場外流通は拡大するばかり――。
それでも築地ブランドの輝きは失われていない。東京・築地に持つイメージを聞いたところ、最も多かった回答が「日本を代表する市場である」が44.6%だった。以下、「活気がある」が42.3%、「伝統がある」が36.3%、「鮮度が良い」が33.5%、「エネルギッシュである」が26.5%と続いた。
豊洲移転までに築地に行ってみたいと思うか尋ねたところ、「必ず行きたい」と「都合が合えば行ってみたい」とを合わせて54.4%と、半数以上が築地市場に行ってみたいと思っている。
市場関係者の威勢の良さは、江戸っ子のきっぷのよさを連想させる。伝統を継承しつつ新たなブランドを構築できるか、まさに今が正念場といえる。
話は変わるが、築地市場の水産物部で取扱量が最も多いのは、鮮魚や冷凍魚ではなく加工品だ。冒頭に挙げた「魚河岸あげ」は練り商品の一種。白身魚と豆腐を原料に用い、ふんわりクリーミーな味は消費者に30年以上も支持されている。
水産業の再活性化のカギを握るのは、魚を食べる習慣のない消費者にも受け入れられる、新たな加工品の開発だ。紀文食品はその役割を担うべき企業の1つかもしれない。