政治・行政の正当性の再構築
現在の政治・行政においても、様々な利害関心を持つ多くの人々を一つの方向にまとめていくためには、正当性が求められることに変わりはない。憲法を筆頭とする法令、選挙による代表の選出と多数決制、"優秀な"官僚――これらは意思決定や判断を行うための実質的機能を持つとともに、そのシステム自体がある種の権威として正当性を支える機能をも持っていたといえる。
昨今の情勢を眺めると、これら全てについて、正当性を支えるという機能が低下しつつあるように思える。本書でキーとなる言葉を使えば、さしずめ「権威の政治・行政」から「国事の政治・行政」への変化による正当性の再構築が求められているということか。
その中で、徳川幕府において「国事の将軍」はむしろ正当性を低下させ、明治維新という最終解を導き出さざるを得なかったということは、心すべき教訓である。