2018年は日本の医療政策の転換点―方向性は共有、問題は実現できるか―
本書で繰り返し述べられているように、2018年は、次期医療計画や医療費適正化計画の策定、国民健康保険の財政運営の見直し(都道府県の責任主体化)の施行、そして、診療報酬と介護報酬の同時改定という節目の年である。著者の言葉を借りれば、ここ数年は日本の国民皆保険の将来に関わる正念場ということになる。
そこで、ポイントとなるのは、①医療機関の機能分化と連携、そして、②地域包括ケアの推進である。
誤解を恐れずにいえば、前述の2018年に実施される各種施策は、いずれもこの2つを実現することを主眼としているといっても過言ではない。そして、この2つの方向性については、医療界のみならず、費用負担を担う経済界にも財政当局にも異論はない。
問題なのは、本当に実現できるのかという点だ。
振り返れば、この2つの課題は、1980年代以降、常に医療行政の課題として意識され、様々な方策が講じられてきた。しかし総じていうと、目覚ましい進展がないまま今に至っている。その背景には、これらの課題が、自由開業医制、私的医療機関中心の医療提供体制、「医療は都道府県、介護は市町村」という行政の役割分担など、歴史的沿革や日本の医療制度の構造から派生した問題であり、ある意味で必然だったからだ。
また、同時に、問題の射程が、医療にとどまらず、介護、福祉、そして、住まい、まちづくりと、範囲が広がり、総合的・一体的な取組みがどんどん難しくなっているという事情もある。
しかし、団塊の世代が後期高齢者となる2015年まで残り10年を切った今日、医療・介護をはじめ限られた社会資源を効率的にフル活用できる体制を地域ごとに構築していくことは至上命題となっている。
そんな危機感を背景に、ここ数年の間に、地域医療構想、地域医療介護総合確保基金、地域医療連携推進法人制度、総合診療専門医、都道府県による国民健康保険の財政運営など、これまでにない様々な政策手段が整えられてきた。今、これらの仕組みを本当に活かせるかどうかが問われている。
本書において、著者が繰り返し指摘しているように、最も政策効果の高い診療報酬を基本ツールとしながらも、こうした新たな政策手段を適切に組み合わせ(ポリシー・ミックス)、総力戦で臨む必要がある。そのためには、これまで医療政策に距離を置いてきた自治体(都道府県や市町村)をはじめ、各セクターが有為な人材を配置するなど、正面から本腰を入れて医療問題に取り組む体制が求められている。
国民皆保険という日本の貴重な財産を、どう引き継いでいくか、そのために関係者が小異を捨て、知恵を絞り、そして、ねばり強く連帯することが大切だと思う。
JOJO(厚生労働省)