担い手(マンパワー)不足への対応が重要課題
人口構造の変容を考えた際に、医療・介護の財政問題と並んで懸念されるのが、担い手(看護師や介護士などのマンパワー)不足である。
2012年段階で医療・福祉就業者は既に労働力人口の約11%を占めているが、今後、要介護者等が急増する中で、2030年には約16%にまで達すると見込まれている。その後も高齢化率は32%(2030年)→36%(2040年)→40%(2060年)と上昇することを考えると、将来的には医療・福祉就業者が労働力人口の2割超という事態も覚悟する必要がある。
近年、労働需給がタイトとなっていることもあって、都市部を中心に担い手不足がクローズアップされているが、今後は、この担い手問題が、医療・介護政策の中心課題となり続けるのだ。
問題解決には、まずは、医療・介護ロボットの導入など医療・介護現場での生産性向上が最優先だが、著者は、看護・介護人材の確保方策として、以下の4つを挙げている。
①新規養成数を増やす
②離職を防ぐ
③潜在看護師(約71万人)や潜在介護福祉士(約53万人)等の活用を図る
④外国人の看護職・介護職の受け入れを図る
著者によれば、①については、今後、若年労働力の需給がさらに逼迫することを考えると、現実的な選択肢ではないという。また、経済界を中心に主張されている④の外国人労働力の積極的受入れも、送り出す側の東南アジア諸国の出生率が低迷しており、中長期的に見ると、多くを期待することはできないとする。
つまりは、①離職を防ぐとともに、②一度、業界を離れた有資格者にカムバックしていただくほかないのだ。そのためには、看護・介護の仕事の魅力を高めるために、キャリアアップへの道筋とそれに応じた抜本的な待遇改善など、現場の実情に即した、本格的な取組みが不可欠となる。