「フード・アクション・ニッポン」は、国産農産物の消費拡大を推し進めるため、2008年に農林水産省が立ち上げた国民運動だ。その一環として創設された「フード・アクション・ニッポン アワード」は、食の分野で先進的な取り組みを行っている事業者や団体を表彰する制度。開催7回目となる2015年は865件の応募があり、その中から大賞1件、部門最優秀賞5件、優秀賞40件、「食べて応援しよう!賞」5件、「インバウンド賞」5件、審査委員特別賞5件が選出・発表された。
2015年11月19日、表彰式がホテルメトロポリタン(東京都豊島区)にて行われた。
実行委員長は、日本経済新聞でコラム「食あれば楽あり」を20年以上にわたり連載し続けている発酵学者・農学博士の小泉武夫さん。小泉さんは式の始めと終わりにそれぞれ挨拶を行った。最後の最後で具体的な商品名を挙げてたたえたのが、大賞の「JASオーガニック黒豚に認証された『薩摩黒豚』」...ではなく、江崎グリコの、歯の再結晶化を図るガムとして知られる「POs-Ca(ポスカ)」だった。
実行委員長をうならせたグリコの研究開発
「私、ずーっと見てまいりましたが――。グリコさんですか。北海道のじゃがいも100%。そこまで国産を考えていていただいている。本当にありがたいことだと思うんです」
研究開発・新技術部門の最優秀賞を受賞したポスカは、ガムなのに初期むし歯のケアができるお菓子(特定保健用食品)だ。グリコはじゃがいもからブドウ糖をつくる加工工程で廃棄されていた部分に、「リン酸化糖」という、カルシウムを水に溶かす力のある特殊な糖が濃縮されることを発見した。これを分離してカルシウムと結びつけ、独自成分「リン酸化オリゴ糖カルシウム」(POs-Ca)を開発。ガムに添付して商品名に冠した。
むし歯は、飲食後に口の中が酸性になると歯からカルシウムが徐々に失われることで生じるが、初期段階なら唾液に含まれるカルシウムを歯の表面に補給することで回復することができる。通常の食品のカルシウムはそれが難しいが、リン酸化オリゴ糖カルシウムは水溶性なので歯の再結晶化を可能とする。
表彰式終了後、会場にいた江崎グリコ健康科学研究所長の栗木隆さんに喜びの声を聞いた。
――受賞おめでとうございます。
「ありがとうございます。『愛用しています』とおっしゃる審査委員もいましたが、本当にいいものを作ろうと私たちは日々研究を重ねています」
――ポスカは国内だけでなく海外でも販売しているのですか。
「美肌を保つにはカルシウムが重要ですが、高水溶性カルシウム素材のポスカは化粧品としての成分としても有効です。ヨーロッパでもお使いいただいております」
――ポスカは水なしでも口の中の衛生を保つことができるそうですね。
「東日本大震災のとき災害地に寄付しました。『口の中がスッキリした』という評価をいただいたときはうれしかったですね」
――まだポスカを知らない方へのメッセージをお願いします。
「お口の健康は非常に重要で、食べ物をおいしく食べるには、口の中を清浄に保つことが必要です。むし歯になってしまうと歯医者に行かなくてはなりません。しかし非常に初期の状態であれば、元の健康な状態になることが私どもの研究で分かっております。通常のデイリーケアにポスカを使っていただければと思います」