ガダルカナル島への派遣
本書が以上に止まるならば、組織運営の悪例を示すに過ぎない。だが著者をして「歴史の皮肉」と言わしめる小沼氏のその後の軍歴によって、本書後段は異彩を放つことになる。
即ち、近代戦への備えを主張してきた当の小沼氏が、補給が途絶し餓死者が続出することとなるガダルカナル島に赴任するのである。
南洋の島・ガダルカナルを米軍から奪回する適任者は誰か。小沼氏は海上の補給作戦や航空機の重要性を的確に指摘し、船舶か航空の専門家を充てるべきと進言したが、上層部は「大陸作戦ばかりやってきた」小沼氏に発令してしまう。
米軍の圧倒的な物量による包囲網の中にあって、氏は火力や補給を重視する持論を封印したまま、むしろ自らが批判してきたはずの夜襲や突撃を命じることを余儀なくされていく。命令は絶対だからである。