日本の法華経研究に新局面もたらす
「法華経」は仏教の根本経典とされるが、これまで鳩摩羅什による漢訳を日本語に重訳したものが読まれてきた。「植木版」によるサンスクリットからのダイレクトな翻訳で、日本の法華経研究は新局面を迎えたことになる。橋爪さんとの対話の中で、ブッダ本来の教えとは何か、「法華経」の正しい読み方などが解き明かされている。
この四半世紀の自身の人生を振り返り、植木さんはこう話す。
「学生時代に、中村元先生の訳された原始仏典を読んで、〝真の自己〟に目覚めることが強調されていることを知り、極度の鬱病を乗り越えることができました。それ以来、物理学を学ぶ傍ら仏教書を読み漁ってきましたが、独学の限界にぶつかっていたころに中村先生との出会いがあり、41歳から直接、教えを受けることができました。先生は1999年、『博士号を取得すること、学んだことは本にして残すことが重要です』という言葉を私に残して亡くなられました。その学恩にお応えするべく、ひた走りしてきましたが、今後とも学び続けてまいりたいと思っております」