11月10日は「技能の日」。1970年に日本で開催されたアジア初の技能五輪国際大会の開会式が行われた日だ。11月は職業能力開発促進月間として様々な行事が展開される。技能の向上とともに、資格を得てスキルアップしたいが、「能力開発」は豊かな人生を保証してくれるのだろうか。現実の厳しさについて紹介したい。
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資格者の数が激増し過当競争
「弁護士、公認会計士、税理士、社労士・・・。『一流の資格で一生安泰』なんて大ウソ!」。キャッチコピーに書いてある。規制緩和によって資格取得者の数が激増。過当競争とダンピングが常態化し、「資格貧乏」があふれているというのだ。
『資格を取ると貧乏になります』(著・佐藤留美、734円、新潮社)は、「資格を武器にスキルアップを」と意欲を思っていた人たちに冷や水を浴びせたかもしれない。弁護士といえば、テレビ番組のコメンテーターとして、ドラマの主人公として活躍している。オモテと実態とは違うのだろうか。
ひと昔前は弁護士も公認会計士も「センセイ」と尊敬され、あこがれの職業だったが、この10年で事情が変わった。苦労の末に合格しても就職もできず、5人に1人の弁護士の年間所得は100万円以下というデータもあるという。資格ビジネスの裏事情を足で調べ、「資格の賢い活かし方」についても伝授する。
失われた20年とともに「あきらめ感」
90年代に『脳内革命』という本が大ベストセラーになった。「脳から出るホルモンが生き方を変える」と説き、「プラス思考」や「ポジティブ・シンキング」がトレンドになり、「自己啓発」ブームの先駆けになった。この流れに「資格取得」がもてはやされ、「スキルアップ」「セルフヘルプ」「夢をかなえる」といった合言葉が続いたが、「失われた20年」とともに格差は拡大し「あきらめ感」が漂っている――。
日本人にとって「自己啓発」とは何なのか。『「自己啓発病」社会』(著・宮崎学、821円、祥伝社)は、「『セルフヘルプ』という病」をキーワードに現代社会の病理を解剖する。
著者は学生運動に没頭、中退したがよく知られた人だった。週刊誌記者を経て半生を綴った『突破者』でデビュー、以後も精力的に執筆活動している。
生きにくい世の中に必要なスキル
『1億人のスキル―人生の参考書―』(著・愛崎好生、1188円、文芸社)の著書、「愛崎好生」はペンネーム。愛知県岡崎市の出身にちなみ、好生の名は「好きに生きるから」だそうだ。「スキル」とも読めるという。1958年の生まれで工業高校卒、自動車会社に勤務し、スポーツ、音楽、読書、酒、映画鑑賞と趣味も多彩だ。
新入社員の心構えを記した「新人とコピー」や人生を豊かにする秘訣を描いた「転ばぬ先の杖」など、生きにくい世の中に必要なスキル(熟練・技)について語る。社会、政治経済、災害復興、文化、教育、環境問題、そして自らの経験則から導き出された人生観に
も及び、一読すれば「生き方指南」となっている。