マネー資本主義のアンチテーゼ 「東京」にもいつかは必要とされる「逆転の発想」

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「右に倣え」ではなく...それぞれのやり方で着実に成果

   政府に勤務する者として紹介させていただければ、今年は地方創生元年であり、東京の一極集中の是正などを図るため、いろいろな政策が打ち出されている。政策に携わる者の一般論として言うと、こうした取組は、ともするといくつかの成功事例を参考にみんなが「右に倣え」となることがある。「ベストプラクティス」に学ぶことはもちろん大事であるが、これには気をつける必要がある。例を挙げると、真庭市の取組はバイオマス発電で電力料金の支払いが減ったが、これは、真庭市がもともと製材業の集積地であり、製材を通じてバイオマス発電をやっても余りある木くずが出るからこそできることである(現に真庭市は余った木くずをペレット(燃料)にして販売し、一部は韓国にも輸出している。)。単に間伐材をバイオマス発電に回すだけでは、電力会社への支払いは減るかもしれないが、採算としてはペイしないのである。庄原市の事例では、和田さんという田舎ゆえのコンプレックスを強くもった人間の取組が紹介されている。彼は1982年に「過疎を逆手にとる会」を立ち上げ、その斬新な取組は本書でいろいろ紹介されているが、それは近隣の仲間たちとの長い議論の積み重ねがあってこそのものだと思う。真庭にしても庄原にしても、どうしようもないところまで追い込まれたからこその「逆転の発想」だったのかもしれないが、それぞれのやり方で着実に成果を挙げている。本書にもあるとおり、数十年後から現在を振り返った際、こうした里山の営みが実は「最先端だった」と評価される日が来るのかもしれない。東京がどうしようもないところまで追い込まれるとどうなるのか、想像したくないが、本書の事例のようにしなやかな逆転の発想が東京からできるのか、いま試されているのは地方ではなく東京のほうかもしれない。

銀ベイビー 経済官庁 Ⅰ種

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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